第1章 プロローグ
だけどそれはすぐにバラバラに崩れることになる。
『え…じいちゃん、今なんて……』
『………お前らは血のつながった姉弟じゃ。
じゃから恋人はおろか、結婚もできん』
『う、うそ…!だって私たち全然似てないよ!?血液型だって違うし……!』
海兵である我らがじいちゃんは、忙しい中暇を見つけては私たち孫の姿を見に、コルボ山に訪れていた。
そのときに話しちゃったんだ
いつかエースのお嫁さんになるのが夢なんだって。
だけどそれを言ったら、じいちゃんは今まで見たことないぐらい真剣な眼差しで私を見て、驚愕な事実を言葉にした。
私はそれを信じたくなくて必死に言い訳をしたけど、じいちゃんの口からはさらなる事実を耳にすることになる。
『お前らは……母親が違う。2人ともそれぞれの母親に似たんじゃろう』
『じゃあ私のお父さんも……ゴールド・ロジャーなの?』
その私の問いに、じいちゃんは言葉にして答えを返さなかったけど、そのときの表情が肯定を示しているのが明白だった。
ゴールド・ロジャー
その名はこの海に生きるものなら誰もが知る名前である。
誰も成しえなかった偉業を唯一成し遂げた男。
彼を『海賊王』と皆が呼んだ
そしてエースは自分の父親がゴールド・ロジャーであることに嫌悪感を抱いている。
『どうして……今まで教えてくれなかったの?』
『それは……』
目を瞑り、歯を食いしばりながら話すじいちゃんを見て、これ以上は教えてくれないんだなと子供ながら察することが出来た。
だから私はそれ以上自分の両親について聞くのを止めた。
『………へ、変なこと言ってごめんね!
そっかあ……私とエースは姉弟なんだ、それなのに好きとか……』
おかしいよね?
そう紡ごうとした言葉は声になることはなかった。
代わりに出たのは溢れ落ちる涙と音にならない嗚咽
その様子を見たじいちゃんはぎゅっと私を力強く抱きしめて、何度も何度も泣きながら謝ってくれた。
じいちゃんは何にも悪くない
そんなこと頭の中では分かってるよ。
だけどね、
消すには大きくなり過ぎたこの想いはどうすればいいの…?
『う、う……うわあああ~~~ん!』
幼かった私はじいちゃんの大きな胸で泣きじゃくるしかできなかった。