第1章 プロローグ
マキノが帰った後、私は彼女から言われた言葉を思い返していた。
『これで本当に後悔しない?』
その言葉がやけに頭から離れず、思わず苦笑いがこぼれてしまう。
そしてぽつりと小さな声で呟いた。
「後悔なら……もうとっくにしてる」
エースの事好きになってから、ずっと。
こんな気持ち、消えてくれればいいのに
何度そう思ったことだろう。
でも彼を嫌いになんてなれなかった。
面白いことがあったら一緒に笑ってくれて
泣いていたら励ましてくれて
困っていたら助けてくれて
そして誰よりもそばで私を見守ってくれる
いつからかなんて覚えていない
気付けば、エースは私の中でかけがえのない人だったの。
『いつか私をエースのお嫁さんにしてね?』
『ばっ…!変なこと言ってんじゃねェよ!!』
幼い子ども心に逆プロポーズをしたの
昨日の事みたいに覚えているよ。
そしてそのときのエースの顔も
今まで見たことないぐらい顔を真っ赤にしていて、額を小突かれたっけ…
思い出すだけで笑みがこぼれてしまう、大切な思い出。
そのときは信じてたの
いつかエースのお嫁さんになるんだって
純粋にそんな未来がくるんだと信じてた。