第1章 プロローグ
「…ふう。やっと片付けが終わった……」
アンナは額に伝う汗を自身の手でぐいっと拭った。
今はお昼の12時。山賊のみんなは朝と夜しか食事をとらないので、片付けが終われば夕方までは自由時間なのである。
さて今日はこれから何をしようかと考えていると、扉をこんこん…と叩く音がした。
こんなふうに扉を叩く人は1人しかいないので、アンナはすぐに扉を開けた。
「こんにちは!ちょっとお茶しない?」
「もちろん!ちょうどいま暇になったところなの」
扉の先にいたのはフーシャ村の酒場の主人であるマキノだった。
彼女はアンナにとって姉のような存在で、たまにマキノの酒場でバイトさせてもらったりしている。
「今日は紅茶持ってきたの!気に入るといいんだけど…」
「なら私はクッキーでも焼こうかな」
「それ最高ね!」
テーブルにはマキノが持ってきてくれた紅茶が淹れられたティーカップと、アンナが焼いたクッキーが並べられた。
紅茶の香りとクッキーの香ばしさを交互に楽しみながら、2人はガールズトークを楽しんでいた。
「そう、それでね……」
「えーーなにそれ!そんなのアリ?」
こうやってマキノとただ話している時間は、アンナにとって本当に楽しい時間で、いつもおなかがよじれるぐらい笑ってしまう。
だけどそんな中、ティーカップをテーブルに戻した後、マキノが明らかに先ほどまでとは違う表情で別の話題を口にした。
「……ねぇアンナ。本当に海兵になるつもりなの?」