第1章 プロローグ
弟の前で言うのはなんだか恥ずかしく、詳しくは話をしていなかったエース。
今日ここにきたのは
アンナに渡す指輪を手に入れるためだった。
そして俺はあいつに伝える。
___ずっと伝えていなかったこの想いを
いつからだろうか
あいつへの気持ちが特別なんだと気づいたのは
ガープのジジイに一緒にダダンのところに預けられて
それこそ本当の姉弟のように育てられた俺たち。
小さいときの俺は今よりも生意気なガキで、いつも喧嘩ばかりしてアンナを困らせてた。
ある日いつものように喧嘩から帰ってきた俺の傷の手当してもらってるときに、ふいに俺が呟いた。
『俺……生きてる意味、あんのかな』
その言葉にアンナはぴたっと包帯を巻いている手を止めて、こう言った。
『私はエースに生きてほしいから、こうやって毎回手当をしてるんだけど?』
そう言って途中だった包帯を最後までまき終わると、そのまま俺を優しく抱きしめてくれたんだ。
『……冗談でもそんなこと言わないで。私はエースがいなきゃ嫌だよ。ずっとそばにいてよ、バカ……!』
そのときのアンナの顔はよく見えなかったけど
たぶん泣いていたんだと思う。
何気なく呟いた言葉で彼女を泣かせてしまったことに
俺は自分のしたことをとても後悔したんだ。
そしてそれと同時に一つ誓った。
もう二度と、アンナを泣かせねェ
俺があいつのそばにいて幸せにしてやるんだって
「とりあえずメシ食いてェなあ」
「…メシは俺の用事が終わったあとでな」
エースの想いなど全く気付いていないルフィのいつも通りの様子に、逸る気持ちが少し落ち着いた俺は目当ての物を探すため町の奥へと進んでいった。