第1章 プロローグ
ダダンの家から出ると、エースは隣にいる弟のほっぺを思い切りつねりあげた。
「いてて!なにすんだよエースぅ!?」
「お前な…あんだけアンナには内緒だっていっただろうが!」
「だってついつい口がすべっちまってよう…」
そう口をすぼめながら小さく呟くルフィに、やっぱりこいつには隠し事なんて無理だなと改めて再確認する。
こいつは昔っからそうだ。
それこそサボがいた時だって____
「……エース?」
昔を思い出していると、俺の様子をみて心配したのか、ルフィが顔を覗き込むようにかがんでいた。
それにしっしっと手を振り、顔をどかす。
「…なんでもねえよ。ほら、準備したら町の方に行くぞ」
「あれ、修行じゃねえのか?」
「あれは嘘だ。予定通り今日は街に行く」
そう。今日は街に行って『あるもの』を探す。
ここら辺は自然豊かだが、あいにく俺が求めているものはここにはないので、気は進まないが高台にある町の方に探しに行くのだ。
「いいのがあるといいんだが…」
ぽつりと呟いたエースの言葉はコルボ山の爽やかな風によってかき消された。
がやがや…
久しぶりに訪れたこの下町は相変わらず騒がしいところだった。
ここは高台の貴族たちも来ることはないが、外のゴミ山の住人もたまにいるので少し治安が悪い。
だが物資は潤沢でここにくれば大抵のものは手に入る。
「んで、エースは何を探してんだ?」
「…ちょっとな」