第3章 芽生え始めた想い
「えっ……」
「あ、いや!私の気のせいだったらいいんだけど!」
そういってあたふたし始めるたしぎだったが、こほんと咳ばらいをした後、言葉を続けた。
「……でも、もし何かあったなら、話聞くだけでもできるかなって思って。アンナ、いっつも我慢しちゃうから」
「そう、かな、」
「うん。スモーカーさんの無茶な指示も基本断らないし、私との鍛錬も弱音なんて吐いたことないでしょう?」
「……」
「アンナのそういうところ、すごく尊敬してます。でもたまには頼ってほしいです。…私じゃ頼りないかもしれないけど」
そういって照れたように笑う彼女の顔は、ほんのり赤く染まっていた。
たしぎがそんな風に思っていてくれていたなんて、知らなかった。
彼女の優しさに目頭がじんと熱くなる感じがして、溢れてしまわないように咄嗟に手で押さこむ。
そして顔を上げて言った。
「ありがとうたしぎ。私、あなたのこと頼りないなんて思ったことないよ。むしろいつも助けてもらって感謝しかない」
「……本当ですか~?」
「本当だってば。信じてよね!」
ジト目で見てくるたしぎに、アンナもジト目で返した。
しばらく見つめ合って、同じタイミングでぷっと吹き出し、部屋に2人の笑い声が響く。
「……私、たしぎが思ってるほどできた人間じゃないよ。今日1日、ずっと嫌な気持ちでいっぱいだったもん」
「それは…どうして?」
彼女の問いに、アンナは今日抱いた初めての感情について洗いざらい話した。
話しながら、こんなことヒナさんを尊敬してるたしぎに言ったら、軽蔑されるかもしれないという不安もあった。
だけど私はありのまま全てを正直に話したんだ。