第3章 芽生え始めた想い
『3日後の朝にこの島を出発するわ。
それまでに戦いの準備を整えときなさい』
そう言った後、ヒナさんはスモーカーさんを連れて夜の街へくりだしてしまった。
スモーカーさんの眉間には、今まで見たことないぐらい深いしわが寄っていたが、いつものことらしいのでたしぎと2人で見送った。
「はあ……」
アンナは自分の部屋のベッドに寝転んで、天井を仰いでいた。
お風呂にも入って、あとはもう寝るだけだというのに、全然眠気が襲ってこない。
気付けばため息をついている気がした。
「……私も、お酒飲めたらよかったのになあ」
まだ20歳になったばかりのアンナは、まだ片手で数えられるぐらいしかお酒を飲んだことが無い。
この支部に来てからは、たしぎとサシで一度飲んだきりだ。
飲めるには飲めるが、別にお酒じゃなくてもいいかな…という感じなのでほぼ居酒屋などには行かないのである。
「今頃、2人は何話してるんだろ……」
2人は海兵学校時代からの付き合いだそうだから、昔話などに花を咲かせているのだろうか。
昔のスモーカーさんてどんな感じだったんだろう?
若いときからあんなにガルガルしてたのかな?
ヒナさんは全部知っているんだろうな____
ずきん。
まただ。ぎゅっと胸の奥が締め付けられる痛みに襲われる。
その時、自室のドアを叩く音がした。
「夜分遅くにすみません。…アンナ、まだ起きてる?」
「たしぎ…?起きてるから、入ってきていーよ」
「失礼します…」
いそいそと入ってきたたしぎは、お風呂上りなのかまだ髪が湿っていて、肩にはタオルがかけられていた。
「珍しいね、こんな時間にたしぎが私の部屋に来るなんて」
真面目な彼女は、約束もなしに夜遅くに部屋を訪ねる人ではないので、少し驚いてしまった。
「……アンナの様子がいつもと違う気がして、少し心配で来ちゃいました」