第3章 芽生え始めた想い
「私は……海軍本部少尉のアンナと言います。
数か月前からこの支部にお世話になっています」
アンナは淡々と質問に答えた。
失礼のないように、悟られないように。
「…!あなたが、あの……」
「すいません、まだ修理が終わっていないので私は失礼致します」
これ以上この場にいたらきっとバレてしまう。
そう思ったアンナは、話している途中だったヒナの声を遮り、部屋から出ていった。
廊下を歩きながら、ふとアンナは疑問に思った。
なぜ自分は会ったばかりのこの人に、こんな感情を抱いてしまっているのだろうか。
じいちゃんやスモーカーさん、もちろんたしぎにだってこんな気持ちになったことない。
自分が劣っていたとしても、これから精進しよう。
それぐらいだったのに。
初めて抱く気持ちにアンナはふうと小さく息を吐いた。
アンナが去った後、スモーカーはアンナが淹れたコーヒーを口にしながら、胸ポケットから葉巻を取り出す。
「…で、お前は何しに来たんだ。さっさと本題を話せ」
心の中でいつの間にか自分好みのコーヒーを淹れてくる部下に感心しつつ、ヒナのやつに話を振ったが、あいつから返ってきたのはまったく別の事だった。
「あの子なのね、ガープくんのお孫さんって」
「……あァ、そうらしいな」
海軍の英雄とも言われるガープ中将の孫であるということは、ここの配属される前の資料からすでに知っていた。
最初はどんな暴君なやつがくるんだと思っていたが、来たのは想像とは正反対の少女だった。
英雄の孫であるということを鼻にかけることもなく、誰にでも優しく接し、周りをよく見ており気遣いもできる。
そして強くなるための努力を惜しまない、優秀な部下だった。
「上も、彼女にはとても期待しているみたいね」
そうなのか…。
まァ、確かにその才能は感じるヤツではあった。
今は自分の方が階級は上だが、アンナならあっという間にそれも越えていくだろう。
「加えてあの容姿だものね。
スモーカーくんが気になっちゃうのも分かるわ」