第3章 芽生え始めた想い
バタバタしながらもなんとか朝礼を終えて、今日の仕事に取り組もうとしたときの事だった。
ドゴオォ……ン!!
轟音と共に、突然基地の入口の扉が吹っ飛んだかと思えば、そこには見覚えのない海兵が並んでいた。
あっけにとられてぽかんとするアンナの元に、その部隊の先頭に立つ女の人が、かつんかつんと踵を鳴らしながらこちらに向かって歩いてきた。
「…スモーカーくん、いるかしら?」
スモーカー…くん!?
あのスモーカー大佐をくん呼びするなんてこの人は一体…?
「あ、あの失礼ですが、お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「……あなた見かけない顔ね。さいきん異動してきた子?」
「おい、今の音はなんだァ!!」
扉が壊された音に異常事態だと思ったのか、スモーカーさんが部屋から飛び出してきた。
そしてずかずかとこちらに来ると、私たちの間に立って女の人の顔を一瞥すると同時に深いため息をつく。
「でけェ音がしたから敵襲かと思えば……てめェの仕業か」
「なんだ、いるじゃない」
「ふつうに入ってくればいいだろ。わざわざ扉を壊すな」
「こうでもしないと、あなた顔出さないでしょ?」
目の前でそんなやり取りをする2人を見て、お互い知っている仲であることが一目で分かった。
アンナが疑問に思い始めていると、その答えをある人物が解決してくれる。
「あっ!誰かと思えばヒナさんじゃないですか!」
『ヒナさん』
たしぎがそう呼んで、彼女の元にぱたぱたと駆け寄った。
「あら、たしぎ。最近はどう?スモーカーくんにいじめられてない?」
「毎日怒鳴られてますが、なんとか……」
「あら。それはいけないわね、あなた、部下には優しくしないとダメよ?」
「こいつが変なところでドジするのがわりィ」
「あ、あのーー…」
仲良く3人で話しているところに悪いと思ったが、気になって仕方ないのでアンナは再び同じ質問をすることにした。
「この方はいったい誰なんです…?」
それに女の人は不敵に微笑んで、こう答えた。
「あら、ごめんなさい。私の名前はヒナ。
今日はスモーカーくんに用があってきたのよ」