第3章 芽生え始めた想い
「はいっ!今日の訓練はここまでにしましょう!」
たしぎの一声にアンナは素振りをしていた手を止め、首に伝う汗をぐいっとぬぐい取る。
すると、たしぎが手渡しで飲み物を渡してくれたのでそれを受けとり一気に飲み干した。
「今日はもう終わり?」
たしぎから剣の扱い方を教えてもらうようになってから、もう半年は経っただろうか。
今では彼女のスパルタ修行にも難なくついていけるようになり、剣術だけではなく体力も向上していることを感じつつある今日この頃だ。
「はい。あんまりやりすぎても仕事に支障が出ますから」
「ええ……。もうちょっとだけ!」
アンナがしぶるのにも理由があった。
ついこの間、やっとたしぎからの許可がおり本物の刀を使えるようになったのだ。
やはり木刀とは違う重みに、アンナは少しでも早く実践でも使いたくて仕方ないのである。
「ダメです。行き過ぎた鍛錬は身体を壊します!」
「それはそうかもしれないけどさぁ…」
いまだにしぶり続けるアンナの横をたしぎが通り過ぎた。
「ほら!早く行かないと朝礼前にシャワー浴びれないですよ?」
「う…分かったよお…」
師匠のお言葉は絶対だからね。
アンナは刀を鞘に納め、先に行くたしぎの後を追った。