第2章 初めての異動
ゴーンゴーン…
時計の鐘が0時を知らせる音が静かな部屋に響く。
私はというと、もちろん大量の資料とにらめっこ中である。
いつもならこの鐘が鳴る頃には布団に入れるのに…なんて思いながらも、ちらっとスモーカーさんがいる方に視線を向けた。
「…なんだ」
「い、いえ何でもないです!」
スモーカーさんはこっちを一瞥することなく、私の視線を感じ取って声をかけてきた。
さすが海軍本部大佐。
それぐらいになると、気配で分かるんだろうか…
1人で納得していると、再びスモーカーさんから声をかけられた。
「はァ……おいアンナ」
「は、はい!?」
「おれァ、眠気覚ましにコーヒーを淹れてくる。お前も飲むならついでに持ってくるぞ」
「へ???」
一瞬何を言われたか分からなかったアンナだったが、回転の悪い頭がようやく回ってきてスモーカーさんの言ったことを理解し始めると、慌てたように椅子から立ち上がった。
「いや!!!私が淹れてきますよ!」
さすがに上司にそんなことをさせるわけにはいかない。
それに自分も集中力が切れかかってたので、気分転換についでに顔でも洗ってこよう。
アンナが部屋から出ようとドアノブに手をかけた瞬間、ふわりと自分の身体が浮いた。
「え」
慣れない浮遊感に自分の身体を見ると、もくもくと白煙が巻き付いており、スモーカーさんの能力だということに気づく。
そしてそのままソファの上に投げられてしまった。
「いいから黙って座ってろ」
そういってスモーカーさんは部屋から出て行ってしまった。