第2章 初めての異動
休憩の間、彼女が名だたる剣士について教えてくれた。
1人は王下七武海の一人
『鷹の目 ジュラキュール・ミホーク』
もう一人はアンナがよく知る人物だった。
「今や隻腕となってしまいましたが……
四皇の一人、赤髪のシャンクスも有名です」
たしぎの口からシャンクスの名前が出た瞬間、ぶー!と飲んでいた水を吹き出してしまう。
それに大丈夫ですか!?と言いながら、彼女はタオルを差しだしてくれる。
「しゃ、シャンクスって…本当に?」
「ええ…とっても有名な海賊ですし、かつてその二人は伝説と謳われるほどの決闘を繰り広げたライバルだったらしいです」
アンナは受け取ったタオルで濡れた顔などを拭きながら、シャンクスと出会った当時のことを思い出していた。
「今日もアンナは可愛いなァ。いつもありがとな!」
大きな右手でがしがしとアンナの頭を撫で、空いている左手でジョッキを掴み、煽るように一気にお酒を飲み干す。
それが私の中のシャンクスの記憶だ。
時々山を下りてフーシャ村のマキノの酒場で手伝いをしていたアンナが、シャンクスと初めて会ったのは10歳のとき。
フーシャ村にやってきてしばらくこの辺を拠点にすると言って、一年近く彼と過ごす日々が続いた。
その間、村にいるときは必ずと言っていいほど酒場にいるような人だったので、飲んだくれの印象しかなった。
でもそれは最初だけで、彼の本当の姿を私は目の当たりにすることになる。
「俺は友達を傷つけるやつは許さない!」
ルフィがシャンクスが馬鹿にされたことに怒って、敵うわけないのに突っかかって山賊たちに襲われることがあった。
ルフィが危ない…!
そんなピンチのとき、ヒーローかのように現れたシャンクスはいつものへらへらした顔じゃなくて、今まで見たことのないような真剣な表情だったことを今でも覚えてる。
副船長が山賊たちを銃一本でのしちゃって、親分みたいなやつはやけくそでルフィを連れて海に飛び出していってしまった。
助けに海に出たシャンクスがルフィを連れて戻った時、彼の左手は失われていた。
「友達のためなら腕の一本ぐらい安いもんだ」
にかっと笑って腕の中で泣き続けるルフィの頭を撫で続けるシャンクスをみて、私は初めて彼をカッコいいと思ったんだ。