第2章 初めての異動
次の日
太陽が昇り、1日が始まるといった時間にアンナは支部局内の訓練場で木刀をもち、黙々と素振りをしていた。
そんな私に𠮟咤激励の声が飛んでくる。
「アンナ!太刀筋が曲がっていますよ!」
「は、はいいっ!」
あれだけ自分が教えるなんて……と最後までしぶっていたたしぎだったが、いざ始まってみればスパルタ教官となっていることにアンナは驚きが隠せないのと同時に少し後悔し始めていた。
(まあじいちゃんよりは分かりやすいけど……)
説明の仕方や、間違っているときの指摘は至極まともなのだが、如何せん彼女の頭の中には『適度』という2文字がなかった。
久しぶりのハードな鍛錬にアンナはヒイヒイ言いながら素振り100回をこなしているのだが、さすがにそろそろ肺と腕が限界を迎えそうだ。
「はあはあはあ……た、たしぎ、ちょ、ちょっと休憩させて…」
「そんなぬるい振り方じゃ敵に致命傷はおろか傷もつくれませんよっ!!」
「も…もうムリ………」
「あ、アンナ!?」
素振り100回をちゃんとやったうえで、アンナはそのまま地面に倒れ込んでしまった。
さすがにたしぎもやりすぎたと思ったのか、先ほどまでのスパルタ教官からいつものたしぎの様子に戻っていて、おろおろしながら水を差しだしてくれる。
「あ、ありがとう……」
疲れてピクピクと軽く痙攣している腕を伸ばし、水の入ったボトルを受け取ると、すぐに乾いた喉にごくごくと流し込んだ。
いつもとなんら変わらない水なのに、こういうときはこんなにも美味しく感じるなんて、人間ってほんと単純だな…とか思いながらも喉を潤す。
「ご、ごめんなさい…。ちょっとやりすぎました」
「ううん。私も久しぶりの鍛錬で体が鈍ってるのが悪いから。それにたしぎの貴重な時間を割いてもらっているんだもの、ワガママいえないよ」
十分に喉を潤した後、少し休憩にしようと彼女が提案してくれたので、ありがたくその厚意に甘えることにした。