第2章 初めての異動
なんて険しい道のりなんだろうとため息をつくと、たしぎが明るい声で話を続けた。
「でも……女である限り限界があると思うんです。どうしたって男には力では勝てませんから」
認めたくないですけどね、と彼女は苦々しく笑った。
その意見には自分も同じ意見だった。
どんなに筋力をつけようとも、ただの力では女が男に敵うことはほぼ不可能だ。
それは十分に理解しており、体の構造上仕方がない。
「だけど…」
言葉を続けようとするたしぎの声に、アンナは耳を傾けた。
「少しでも負けないように、私は剣をとって、戦ってるんです。
……まあただ単純にアンナのように腕っぷしがないのもあるんだけどね。
アンナもこの機会にほかの戦い方も学んでおくのもいいかもね?」
「たしかに……じゃあ私も剣の使い方覚えようかなあ、」
「ほ、ほんとに!?」
たしぎは冗談で言ったつもりだったのに、と目をぱちくりしながらこちらを見ている。
「せっかくじいちゃんの元から離れたわけだし、新しいことにも挑戦してみないとね!
……ってことでたしぎ先生、ご指導お願いしまーす♪」
「そ、そんな私、人に教えられるほどの腕前じゃ……!」
アンナは胸の前で手をぶんぶん横に振る彼女の肩をぽんぽんと叩き、ウインクする。
「だいじょーぶ!たしぎのこと、私信じてるから!」
「もう……そんなの憶測じゃないですか」
うなだれてしまうたしぎだったが、支部に着くまでの間に何とか交渉して剣の指導をしてもらえることになった。