第2章 初めての異動
会ったこともない人だから、悲しくなるとかそういうのはないけれど、ここはグランドラインに向かうときは必ず寄ることになる島だから、きっとエースもこの町を訪れたんだろうな……
処刑場は当時のまま残されていて、そこはたくさんの人が行き交う広場にあった。
「ここから『大海賊時代』が始まったんだ……」
アンナの小さな独り言に、たしぎは処刑場を見つめたまま隣に並ぶ。
「私はここに来るたび思い返すんです。
……自分の信じる海兵としての正義を」
『正義』
それは海兵のみなそれぞれが掲げていて、それぞれの信念が込められているもの。
私の正義は入隊当初から変わっていなかった。
『大切なものを守りたい』
ただ、それだけ___
「えっっ!??」
「そ、そんなに驚くことかなあ?」
一通り町案内が終わった帰り道、たしぎと戦闘スタイルについての話になり、自分は素手で戦ってきたのだということを伝えると、彼女が驚いた声をあげたのだ。
「今まで自分の腕一本で戦ってきたんですか…」
「戦い方を教えてくれた人が拳で戦う人だったから……必然的にそうなっちゃたの」
「!ああ、そういえばあなたはガープ中将の……」
じいちゃんの孫だということを分かると、納得したような顔になるたしぎ。
海軍に入る前から薄々気づいてはいたけれど、実際自分が海軍に入ってみると、じいちゃんの凄さに圧倒されることばかりだった。
海軍本部中将レベルになると、悪魔の実の能力者がぞろぞろいるのだが、その中でもじいちゃんは悪魔の実を食べず、己の拳で戦い続けているという圧倒的な強さを誇っていた。
そんな人に右腕になれと言われているのだから、ほんとたまったものじゃない。
いつまでたっても追いつけないような気がする……