第2章 初めての異動
「……なんかすいません」
「いえ、スモーカーさんはいつもあんな感じなので……慣れっこです」
あははと乾いた笑いをこぼした彼女は、改めて私の方に向き直す。
「私はたしぎといいます」
「初めまして、私はアンナと言います」
「そういえば……お聞きしたんですけど、アンナさんは少尉なんですよね?でしたら私の方が階級下ですし、ため口でもかまいませんよ?」
そう。彼女の言う通り、海軍歴でいえばアンナはまだ半年という短い期間でしかないのだが、階級でいえば彼女よりも3つも上であった。
しかしアンナは首を横に振ってこう答えた。
「いえ…たまたま階級が上だっただけで、たしぎさんのほうが実力も歴も上ですから、そんなわけにはいきませんよ。むしろ、たしぎさんこそ私にかしこまらなくていいんですよ?」
自分とって階級はあまり重要なことではないので、仲良くなるためにもあまり堅苦しくないように接していきたいなという思いからの提案したが、たしぎさんは納得いかないみたいで、胸の前で手をぶんぶんと振る。
「そんなわけにはいきませんよ!」
「じゃあ、お互いなしにしませんか?
……私、今まで同僚に女の子がいたことなくて」
「そっ、それならいいですよ…。じゃあこれからよろしくね、アンナ」
代替案を差し出すとそれには納得してくれたみたいで、堅苦しいのが少しほぐれた雰囲気が2人の間に流れる。
「じゃあさっそくだけど、この支部の案内をしようかな」
「うん、よろしくお願いしますっ!」
それからたしぎには支部の建物の中はもちろん、この支部がある町『ローグタウン』についても町案内してもらった。
フーシャ村と同じ、イースト・ブルーにあるこの町だけれど来たことは一度もない。
だけど名前だけは知っていた。
なぜならここはお父さん、『海賊王』ゴールド・ロジャーが生まれ、処刑されたところだったから。