第1章 プロローグ
お風呂から上り、腰まで伸びた淡い紫色の髪を乾かした後、約束通りエースのところに向かうため玄関の扉を開けると、すでに彼は入口で待っていた。
「ごめん、待たせた?」
「いや。全然。それよりちゃんと乾かしてきたか?」
そういってアンナの髪を一束手に取り、優しくふれるエース。
きちんと乾かしてきたことを確認したのか、「行こうか」といってアンナの手を取り、闇の森の中に誘った。
いつもより少し体温が高く感じるエースの手に引っ張られて辿り着いたところは、
「あっ…!」
「ここなら落ち着いて話できるし、星空もばっちり見えるからな!」
目の前に広がるのは満点の星空と、際限なく広がる黒い海。
日中にみる景色とは全く違うからか初めてこの場所に来た感覚に陥る。
今日は月が出ていないから星が輝いて見えるし、海は闇のように深い色でなんだか怖く感じてしまった。
エースは得意げににひひと笑って私を丸太までエスコートしてくれる。
彼のエスコートのままにすとんと丸太の上に座ると、そのまま彼も隣にどかっと座りこみ、一緒に頭の上に広がる星空を見上げた。
「こうやってゆっくり星空を見上げるなんて……久しぶりかも」
「俺もだ。…お前とこの時間にいっしょにいること自体久しぶりだもんなァ、」
「そうだね。だってエースたちすぐ寝ちゃうじゃない?私はけっこう遅くまで起きてるよ」
「逆になにしてんだよ夜遅くに」
「読書とか?日によるけどね」
私が笑えばエースも笑う
そんな穏やかな時間がしばらく続いた。
しばらく話してひと段落着くと、少し沈黙の時間が流れる。
するとその時を待っていたかのようにエースが口を開いた。