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夜と月と雨が降っても

第1章 月から








『寝たフリ 下手すぎ』




目を閉じたままでも月明かりが部屋に差し込んでいるのがわかる
そういえば今日はきれいな満月だった
寝る前に窓から夜空を見上げたのだ
無数に散らばる星、とはいえないごく普通の夜空だったけれどそこに浮かぶ煌々とした満月は自分を優しく照らしていた
その満月がふとんに横になっている自分を今も優しく照らしているのだ
それは理解出来る、理解出来ている
でも、理解できないことがある

『寝たフリ 下手すぎ』

確かにそう聞こえた
聞こえたと言うより、脳に響いたような感じで突然その言葉が飛び込んできたのだ
身体を動かそうと思えば動かせる
もちろん瞼を開こうとすれば開くことが出来る
意識は、ある
だから理解できないことが起きていることが理解できない
その声は
その声は
絶対に聞き間違えることがないはずの声だったんだ
その声を聞く度に嬉しくて時には胸を締め付けられてきたのだ、聞き間違えることなんてない
頭にたくさん記憶として残る言葉
まだまだだね
ふーん
俺はもっと上にいくよ
ねえ
彼が言葉として発したそれら、これは彼が言った台詞、言葉、メッセージ
それが、頭に残っている
けれど寝たフリ下手すぎなんて言葉、あっただろうか
きっと、ない、と思う
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