第1章 分岐点 ※
櫻乃side
『成程、数字持ちですか』
父と母から、十二鬼月の存在は聞いたことがある。なんせ、父親と母親は元鬼殺隊員だからだ。
だけれど、刀がなければただの人間。コイツに殺されたけれど…。
「いいことを教えてあげようぞ。妾の血鬼術は人間の心と身体を操るもの。
神経を麻痺させたり狂わせることなど造作もない。人間は脆い。すぐに精神に異常をきたし死ぬ…哀れなものよなぁ…」
フッと鼻で笑うコイツは何を考えているのだろうか。少なくとも今の私には理解できない。
…いや、理解してはいけない。
「そうだ、まだ名乗っていなかったねぇ…。妾は十二鬼月、下弦ノ参___麗羅(うら)と言う。仲良くしようぞ。そなたの名はなんという?」
流石…名は身体を表す…といったところだろうか。眉目秀麗で浮き世離れしたこの鬼に相応しい名前だ。
『……私は櫻乃結霞』
「そうか、結霞というのか。よい名じゃ。」
『ご生憎、貴女に呼んでもらうためにつけられた名前じゃないのて』
「連れぬことを言うなよ、結霞」
そういい麗羅は自身の唇をそっと指でなぞる。