第2章 初任務
星月side
『…ふふっ、稔さんはとても良い方ですもの。私を傷つけるような真似は致しませんでしょう?私を案じて言ってくださったことは感謝しますわ』
「……まったく、星月さんには敵わないなぁ…」
そう言い、お互い顔を見合わせて吹き出した。
『……また、会えますでしょうか』
鼻緒を縫い終わると、ふとそんなことを言っている自分がいた。
稔さんは目を開いて驚いている。
『あっ…!!今のは忘れてください!!では、これで…』
私が急いで出ていこうとすると、稔さんは腕を掴んできた。
「貴女はここら辺の土地勘はないでしょう?迷子になりますよ………それと、僕もまた会いたいです」
私は驚いて、ぱっと顔をあげる。
そこには赤い頬を手で隠しながらそっぽを向く稔さんがいた。
「家の近くまで送ります。待っててください」
その日から、私は稔さんと会うようになった。
婚約者がいても、彼を忘れることなど出来なかった。
稔さんのことを両親に話しても、反対されるに決まってる。
ならいっそのこと、稔さんと駆け落ちでもしてしまおうか、なんて馬鹿なことを考えた。
稔さんには私の家のことを伝えていない。
勿論婚約者がいるなんて知らない。
婚約者がいると知ったら、稔さんに軽蔑されるだろうか。
軽い女だと思われてしまうだろうか。
言いたくない、でもいずれ婚約者と結婚することになる。
私は毎晩毎晩悩んだ。
何が正解なのかわからなかった。
でも私は、初めて愛を知った。