第2章 初任務
星月side
『お、お邪魔します…』
「親は居ないから、楽にして貰って大丈夫ですよ」
そう言われ、素直に肩の力を抜いた。…親が居ないって……あまり聞かないほうがいいはず…。
そう考えているうちに、彼は裁縫道具を用意してくれた。
私はそれを拝借し、鼻緒を直すことにする。
さすがに外履きを家の中に持ち込むのは辞めといた方がいいから、玄関で縫うことにした。
『あ、そういえば申し遅れました。私は星月と申します』
名字を名乗れば、私が名家の人間だとわかってしまう。
ほぼ反射的に、私は名字を名乗らなかった。
私の名字を聞いた途端に、掌返しになる彼を見たくなかったのかもしれない。
「僕は須間(すま) 稔(みのる)と言います。星月さん…素敵なお名前ですね」
『稔さんですか…素敵ですわ。…でもすいません。名乗らずに家に上がってしまって…』
「いえいえ、それこそ僕の方だってすいません…。でも、あんまり男の家にすぐ上がるのは感心しませんよ」
『え…?』
「星月さんはお綺麗なのに、危機感が無いのですから。悪い男に襲われてしまいますよ。…僕もその一人だったり…」
そう言いながら笑みを浮かべる稔さん。