第1章 分岐点 ※
櫻乃side
だけれど別れは突然訪れる。
結局私は親戚の家に泊まった。お礼として山菜をあげた。私は急ぎ足で家へと帰宅する。
一刻も早く両親の無事を確認したいからだ。
本当の親と違えど、養ってくれた恩がある。だけれど、何故か嫌な予感がするのだ。
家に近づいてきたけれど、藤の花の匂いはしない。代わりにするのは血の匂い。
風に流れて噎せるような匂いがする。
気の所為、私の早とちり。そう言い聞かせるけれど、近くになるにつれ血の匂いが濃くなり不安を煽る。
視界に今はもう見馴れた古民家。戸は不自然に開いている。中を見ればそこは血の海と化していた。
私の視線は釘付けになる。父と母の屍だ。"なにか"に腹や顔を貪られた形跡がある。
腕はだらんと下に下がり重力に負けている。
『あっ…あ゛…そんっ…な゛…う、そっ…』
嘘だと思いたい。目を逸らしたい。でも…逸らせない。これは確実に「鬼」の仕業だ。
まだ近くに親を食べた鬼がいるかもしれない。
まだ日は登ったばかりだから近くにいるはず。
神経を研ぎ澄ませながら鬼の居場所を探った。