第2章 初任務
櫻乃side
「簪っ…」
『…ゆっくりで大丈夫ですよ。話してください』
「……あの鬼を倒しに来た鬼狩りの子に…簪をあげているの…町人に変装するために…だけど…誰一人として隊服を取りに帰ってこなかった」
『…はい』
「気の所為かもって…忘れてただけかもって…自分に言い聞かせても…誰一人…帰ってこないの…。だから…怖いの。」
『…大丈夫です。私は必ず、生きて帰ってきます。』
私は彼女の背中を擦ると、ここから少し南の方に鬼の気配があることに気づく。
立ち上がり、彼女に頭を下げるとそっちの方へと屋根をつたって向かった。
普段は黒くて履き口は踝(くるぶし)が隠れるほどで、ヒールの高さが7cmのブーツを履いているから、下駄の感覚に違和感を少し覚える。
まあ、直に慣れるだろう。
鬼の気配がある少し手前で地面に降りると、平然と、その町のただの町人のように歩く。
だんだん鬼の気配が濃くなる。
『不気味ね…15歳なんだから早く家に帰らないと』
独り言のように歳を呟く。…4歳盛ったけど、多分バレない。
幼すぎては逆に食われない可能性だってある。