第2章 初任務
櫻乃side
私は藤の家紋の家で、隊服から町人の着物へと着替える。
着物は鬼と対峙するときに動きにくいが、服装でバレて、戦う前に逃げられてははいけないからだ。
その上にいつもの羽織をして、腰元の刀を隠すようにする。多少はみ出るのは仕方がない。
少し化粧道具を借りて、白粉と紅で化粧をする。今世は11歳だけど前世は19だもの。
ここは難なくできた。髪の毛は項近くでお団子状に纏め、簪を一つつける。
簪は藤の家紋の家の奥さんである、小町さんから、譲り受けた。
「年頃の女の子なんだから少しくらいお洒落したってバチは当たらないわ」
いたずらっ子のようにふふっと笑う奥さんはとても可愛らしかった。
『ありがとうございます、奥様』
「奥様なんて言わなくていいのよ?…幼いのに鬼を狩るなんて大変でしょう?貴女たちを少しでも支えられたならそれで嬉しいの」
私は準備をし終えると玄関に行く。奥さんは不安そうな顔をしていた。
明らかに調子が悪そうだ。血色が悪くなり、身体は小刻みに震えている。
…そういえばこの任務には私が当たる前にも女性の隊士か何人か送り込まれたらしい。
男の人の前には現れないからだ。
私より階級が上の、戊隊士ですら音信不通。ただでさえ女性隊士は少ないのに…。
そこで下弦ノ壱を倒した私が、送り込まれたというわけだ。
当然のこと、この藤の家に来て鬼狩りの支度をしたことだろう。
でも私が今この場にいるということは、その鬼狩りの女の子は皆、死んでしまったということを意味してしまう。
だからこの人はこんなにも怯えているのか。