第1章 分岐点 ※
櫻乃side
夕餉を食べ終わると、耀哉様に呼ばれた。ついていけば畳が敷き詰められた一室で、あまねさんもいる。
深刻な面持ちをしていて、何か只ならぬことが起きるのではないかと若干緊張する。
「結霞…実はね…」
ゴクリ…そう喉がなりそうになる。
「……明日に、鬼殺隊になってからの初任務があるんだ」
『…………へ?』
「初任務があるんだ」
…いや、それはわかるけれど…。…深刻な顔をして言う話ではないのでは?そもそも任務なんてみんなするものだし…。
「鬼殺隊はね、初任務の死亡率が一番高い。勿論結霞は強い。だからこそ危うい。慣れや恐怖が体を蝕む」
『…ええ、それは十分承知の上です。』
「……それに……」
お館様は何か言い淀んでいる。しかしその言葉を言うことはなかった。
結霞は開いた襖から外の景色を見る。でもそこには、深い闇しかない。結霞は静かに微笑む。何もかもすべて受け入れたように。
それは11歳という年端も行かぬ少女のするような顔ではなかった。
鬼に出会わなければ、彼女はこんな顔をすることなど人生でなかっただろう。
だけれど転生を後悔しているわけでは決してない。これが私の宿命だと思っているから。