第1章 分岐点 ※
櫻乃side
『困ったものですねぇ…。』
失礼承知でお面を外させてもらう。
やっぱりといったところだろうか、目の下に濃い隈がある。一日二日で出来るような隈ではない。
あ、そうだ。と思い出す。前世の持ち物の中に、あれが入っていて、持ってきていたはず…。
懐をがさごそと漁ると、乾いた薬草が出てくる。これは一見普通の葉だが、
「エゾウコギ」というもので、水で煎じて服用するものだ。
北海道…昔で言う蝦夷地によくあることから、「エゾウコギ」と呼ばれるようになったんだとか。
不眠症や疲労回復効果がある。前世は医者を目指していただけあって、体の仕組みなどだけでなく、
薬草についての知識もある。まさかこんな役立ち方をするなんて思っても見なかったけれど…。
私は里の人から薬缶を拝借し、井戸の水と薬草を入れて煎じた。