第1章 分岐点 ※
櫻乃side
「ところで結霞といったかな?刃こぼれしちゃった?」
『いえ、私はちょっと特例の新参者でして…里長様と刀を打ってくださった鋼鐵塚様にご挨拶をと思いまして』
「ええ子じゃわい。ここには温泉もあるからね。ゆっくりしていき」
『有り難いお言葉なのですが今日は都合の関係で夕刻までには屋敷に戻らなければならないのです。
また今度、ゆっくりさせてもらいますね』
「いつでも大歓迎」
私は立ち上がると一礼して里長の元を去る。あ…鋼鐵塚さんが何処に居るのか聞くのを忘れてしまった…。
仕方ない。周りの方に聞くか…。
『あのー、聞きたいことがあるのですけれど…お時間頂戴してもよろしいでしょうか。』
「ど、どうぞ…!!」
『鋼鐵塚蛍さんをご存知でしょうか。出来れば居場所を教えて頂きたいのですが…』
「鋼鐵塚…なら、あそこの角をまがったすぐのところにいますよ。笠に風鈴をつけているのですぐにわかると思います」
『まあ…ご丁寧にありがとうございます』
私は頭を下げると教えてくれた方へと向かった。そこにはその人のいった通り、風鈴を笠につけた人が倒れていた。
………ん?え?倒れていた…?
『だ、大丈夫ですか…?』
顔を確認するが、皆と同様、火男のお面しか確認はできない。多分この人が鋼鐵塚さんなんだろうけれど…。
これじゃあ御礼すら聞いてもらえない。
私は鋼鐵塚さんを米俵の如く担ぐと、近くにあった木の長椅子に寝かせる。