第1章 分岐点 ※
櫻乃side
「…そうだね。それがいい。結霞も両親を亡くしたばかり。いきなり知らない子の家に入るのも躊躇するだろう」
『ですがお館様…これ以上特別な待遇をさせてもらうなんて…』
「大丈夫だよ。好きなだけいるといい。結霞は私たちにとって家族同然なのだから」
『……ありがとう…ございます…。』
なんて温かい言葉をかけてくださるのだろう。なんでこんなにも優しい方なのだろう。
私は我慢していた涙が溢れ出した。
「おやおや、大丈夫だよ。結霞は一人じゃない」
そう言いながら、背中をさすってくれる。
どうしてこんなにも…欲している言葉をかけてくださるのだろう…。
前世の記憶を持ちながらも、それを誰にも話すことが出来ずに、ずっと孤独だった。
お館様の言葉が、…私を支えてくれる。…一人じゃないって思えた。