第1章 分岐点 ※
麗羅side
一人蹲り泣いていると、私の前に、心さんが現れる。…幻、…なのかなぁ…。
『あぁ…っ…ごめんなさい心さん…!!私っ、…私…!!!』
夢でも幻でもなんでもいい。ただ、貴女に謝りたい。許してもらえなくてもいい。
「大丈夫だよ麗羅。僕がつけた名前を大切にしてくれてありがとう。」
『ごめんなさい心さん…!!私っ…心さんのことお慕いしております…!!』
私は心さんに泣いて縋った。そんな情けない私を、心さんは受け止めてくれる。
彼のぬくもりを、何百年振りに肌で感じた。
「大丈夫だよ麗羅。君には僕がいる。麗羅のためなら何処へでもついて行くよ…例え地獄だとしても」
『心さん…っ…』
すると彼は私の頬にある涙の痕を指でなぞると、唇に口づけをする。
なんて優しい口づけなのだろう。まさに、陽だまりのような彼を体現していた。
「麗羅と名付けた理由はね。初めて会ったときに、君はこの世界の誰よりも綺麗で美しく、
羅針盤の如く僕を導いてくれる女神のような存在だと思ったからなんだ…自分で言うのは恥ずかしいね…」
『あぁ…やっと聞けました。あのとき…聞けなかったからっ…!!』
「ごめんね、一人にして」
優しく、すべてを包み込むような抱擁。
頭の中の、霧が晴れる。私がずっと住処としていた寺の墓場にある一際目立つ墓石の文字。そこには汚れながらもきちんと
「桐賀柄 家 之 墓」と書かれていた。
ああ…ここが…私のいた場所は貴方の家だったのね。どうりでずっと、懐かしい気持ちだったの。そして少し寂しかったの。
私達は消えてゆく。これからは、何処にでも一緒だ。ずっと…離れない。