第1章 分岐点 ※
麗羅side
『な…なんでっ…しょ、か…』
「えっと…君の名前、教えてくれないかな…?」
眉を下げ、そう私に言ってくる。でも、周りの目が気になって仕方がない。
いつまでも答えない妾が、周りを気にしていることに気がついたのか、場所をずらそうと誘ってくる。
妾は何も言わずに青年に手を引かれるがまま、ついていった。ついた場所は一つの寺。
そう、ここがこの青年の生家である、桐賀柄(きりがえ)寺だ。由緒正しく礼儀を重んじる名家である。
桐賀柄寺の敷地の裏へと連れて行かれる。そこは私達以外の人気はなく、静かだった。
「…ここなら誰にも見つからずに話せますよ。僕は桐賀柄(きりがえ)心(こころ)です。よろしくお願いしますね」
教養を受けた女性のような喋り口調で話す青年…もとい心さん。名家生まれだけある。
『わ、私は……な、なまえ…』
私も慌てて名前を答えようとするも、親に名前をつけられたことがないため、言うことが出来ない。