第1章 分岐点 ※
麗羅side
ある日、町へ出ていたときの話だ。
「気持ち悪い…罪人がなんの用なのかしら…」
「あんなみすぼらしい格好…よく生きていられるわね」
いつものように悪口を言われる。眉を顰め、口元を袖で覆い、汚物を見るような目で妾を見る。
「町に来るな!罪人が!!」
すると突然、妾に殴りかかってきた男がいた。きっと見せしめにするつもりなんだろう。
目を閉じて、痛みを耐えようとしていたそのとき…。
「おやめください。暴力はよくありませんよ」
パシッと音がしたかと思い顔をあげると、男の腕を掴んでいる青年がいた。
上質な着物と羽織。眉目秀麗という言葉がよく似合う妾とは縁遠い人。それが一番初めに思ったことだ。
「なっ…桐賀柄(きりがえ)様!!申し訳ありませんでした…!!ご無礼をお許しください…!!!」
「いえいえ、謝罪ならこの女性にしてくださいな」
そういい妾に目を向ける青年。桐賀柄…ここらへんの町では一番の名家だ。
どうりで穢れを知らない人だと思った…。
「っ……すまなかっ、た…」
男は逃げるように走り去っていった。妾のような罪人の娘に謝るなんて、一生物の赤っ恥だろう。
いい気味だと思いながら、助けてくれた青年に感謝をする。
『ありがとうございました…』
今にも消えそうな掠れた声で御礼を言うと、私は走る。
「あっ…待って…!!」
手をパッと掴まれる。