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【じゅじゅ】短編集

第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)



 彼らが何かを喚いていたけど、ほとんど覚えていない。たしか、『何なんだよあの化け物!』的なことだったとは思う。

「はあ、アンタたちは本当いつまで経っても変わらないのね?」

 馬鹿みたいな元同級生たちを見ていたら、いじめられていたことなんて、どうでもよくなっていた。

「アンタたちも見たんでしょう? 私がずっと視えていたのはアレよ」

 死角から飛び出してきた呪霊に、鼻水と涙を垂れ流した彼らが悲鳴を上げる。

「話している途中なんだから、邪魔すんな」

 意図せず低い声が出て、自分でも驚いたけどそのまま弾丸をそれに撃ち込む。

「……死にたくなかったら、さっさと行け! あと、もう心霊スポットなんて巡るな! 何も出来ないくせに!」

「お、おい……。でも、お前は……」

「私は、これが仕事だか」

 「ら」と、言い終える前に、全身が重力に押し潰されそうな感覚が走る。

 ……最悪だ。最悪な事態を招いてしまった。

「……げろ」

「……は?」

「逃げろって言ったんだ! マジで死ぬぞ!」

 そう言ったの同時に、轟音と共に天井が崩れ落ち、そこから現れたのは。

「特級が来るなんて、聞いてないって……」

 二級の私じゃあ歯が立たないなんて分かっている。

 でも、今此処で援軍を要請したところで意味は無い。

 私が、やらなければこの心の奥底から忌々しい同級生たちを守ることさえ出来ない。

 馬鹿なのは私も、か。

「走れえええええええええっ! 振り返るな! 生きたきゃ、逃げろ!」

 腹の底から、渾身の怒声を彼らに浴びせる。

 情けない声と、足音を背中に私は特級呪霊と対峙した。

「私は呪力を圧縮して、こうやって弾丸として射出するんだ……っ!」

 何発か浴びせたけど、さすが特級と言ったところか。あまり効いていないように見える。

 術式開示をしたところで、二級の私ではこの程度ってわけで。

「じゃあ、君にだけ特別に見せてあげるよ」

 床を蹴り上げ、壁伝いに駆け抜けながら呪霊の足元に弾丸を埋め込んで行く。

 これは、実は野薔薇の術式を参考に応用させてもらったもの。でも、リスクが大きすぎるのが難点だった。

 呪霊を囲むように弾丸を埋め込んだ私は、最後にその脳天に弾丸を埋め込む。

 このまま呪力を流し込むのだが、床に埋め込んだ弾丸はそれを増幅させるため。

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