第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
恋って、何なんだろう。人を好きになる気持ちって、どういうものなんだろう。
恋ってものを、してみたくなった。
その日からと言うものの、先生が絡んでくることが多くなった。
任務後に頭を撫でることは勿論、非番でも声をかけられて一緒にご飯を食べたり、と何気無い日常を過ごす事が多くなっただけ。
友達と過ごすって、きっとこんなことなのだろう。
一緒にご飯を食べて、取り留めのないあり
ふれたことを話しながら笑い合って……。
先生には感謝しかないなあ、そんなことを思っていた。その感謝の気持ちとは別に、湧き上がった不確かな感情には蓋をして。
そんなある日のことだった。
私の地元の近くにある廃ビルに、三級呪霊が現れたと報告が入った。
元々、その廃ビルは地元に住む人間で知らない人は居ないほどの心霊スポットで、私自身いつか被害が出てもおかしくない、と危惧していた場所だった。
野薔薇は違う任務に当たっており、初めての一人での任務だった。
補助監督さんが帳を張ってもらい、廃ビルに足を踏み入れる。
ジャリ、と埃と崩れかけた壁の破片を踏みつける音が嫌に耳についた。
確かに、呪霊の雰囲気は感じ取れる。
「報告と違うじゃない……」
最初の報告によれば、一般人は巻き込まれていないとのことだったが、目の前で高校生らしき男女数名が身体を震わせ、地面に蹲っていた。
「君たち、悪いことは言わないから、早く逃げなさい。出口に居る人に声をかけてくれれば大丈夫だから」
彼らに向かって飛びかかった呪霊に、呪力の弾丸を撃ち込みながら彼らに歩み寄る。
暗がりの中、その彼らの顔を見た瞬間、私の思考は停止した。
この人たち、いや。コイツらは……。
「……あれ、お前?」
紛れも無い、私をいじめていた元同級生たちだった。