第1章 生理痛と七海(ネームレス)
ふわふわした微睡みの中、頭を撫でられる感覚で目を覚ました。
薬が効いてきたのか、頭痛も生理痛も痛みはあるが幾分かはマシになっていた。
ぼんやりとした頭の中、その頭を撫でる手の主を視線で追いかけた。
「……起きましたか」
「え? な、なみさん……?」
「ええ、私です」
『どうして此処に?』と、思ったけれどきっとさっき家入先輩が電話していた相手は、七海さんだったんだろう。
そっと起き上がって、七海さんを見つめた。
「家入さんから、連絡を頂いたんです。『アンタの恋人がやばい』、と」
「……あはは、確かにやばかったですね」
たしかにあの痛みは、尋常じゃなかった。
「……しかし、顔色はまだよろしくないですね」
するり、と頬を指先で撫でられる。
「今日の食事は、一旦取りやめにしましょうか」
楽しみにしていた彼との食事を、やめようと彼は確かに言った。
ああダメだ、それだけは言ってはダメだ。
ホルモンバランスのせいで情緒不安定になっていたとしても、それだけは言ってはダメだ。
「……いやです。七海さんとあまり一緒にいられないから、やだ。少しでも、ながく一緒にいたい」
……言って、しまった。面倒臭い女だと、思われたに違いない。
でも、あまり一緒に居られないというのは事実だった。
お互いに一級呪術師ということもあり、単独の任務がほとんどで、合同で任務をしたとしてもお互いの疲労を考慮して、長い時間一緒にいたことは、あまり無かった。
「……貴女、それ本気で言っていますか?」
彼は頭を片手で覆い、ため息をついた。
これは、確実に呆れられた。