第1章 生理痛と七海(ネームレス)
「家入先輩ぃぃぃぃ……」
「何、ゾンビみたいな声出してるんだ。……あぁ、もうそんな時期か」
「説明が省けて助かります……。少し、ベッド借ります……」
「あぁ、好きなだけ使え。薬はここに置いておくから」
「ありがとうございます……」
ズルズル、と壁伝いにやって来たのは高専にある医務室だ。
家入先輩が用意してくれた錠剤を、ペットボトルの水で流し込んだ。
女性特有の悪魔の一週間が、私を現在進行形で襲っていた。
いつもなら、そこまで酷くないはずのそれだが、何故か今月に至っては子宮を握り潰されたような、しかも鋭利な物で何度も何度も刺されるような痛みも時折あった。
きっと、ストレスが原因だろう。最近、面倒臭い案件の任務が多すぎた。
「いだぃいいい……」
お腹を抱え、それを襲う鈍痛と激痛に、冷や汗を流しながら耐えることしか出来なかった。痛すぎて、ついには涙も出てきてしまった。
「おい、本当に大丈夫か? いつもは、そんな風にはならないだろ」
「いだい、けど最近、面倒な案件がおおくて……」
「原因はストレス、か。ちょっと待ってろ」
そう言うと、家入先輩はどこかに連絡を取るために廊下に出てしまった。
ズクズク、と痛む腹と低気圧のせいで頭もガンガンと痛くなってきた。もう、最悪だ。
そういえば今日、恋人の七海さんと夕食をとる約束をしていたのを忘れていた。
痛い。七海さんにあいたい。痛い。七海さんとご飯がたべたい。痛い。七海さんに撫でられたい。
「いだいよおおおおお」
痛みに身体をよじればよじるほど、痛みは増えていくばかりだった。
そして、私は気絶するという形で意識を失った。