第3章 倦怠期に喧嘩した七海との話
私が甘えられない性格になったのは、私の家庭環境にあった。
私は生まれた瞬間から視える人間で、家族や親族から白い目で見られたり、後ろ指をさされて生きてきた。
母も視える人で、視えることに関しては唯一の理解者だった。そんな中、弟が生まれた。
可愛い、可愛い私の弟。それからは、早かった。いつも母は一人で弟の面倒を見て、私もお手伝いをしたけれどお父さんは帰って来ては母を叩いていた。
大きな音に驚いたまだ小さな弟が泣き叫び、私はそれを泣きながら抱きしめてあやす。
……我ながらとても、普通とは言えない家庭環境だった。
だからこそ、『わがままを言うこと』や『甘えること』が出来なかった。
そんな、ある日だった。いつもの様に、母と父の喧嘩を 背中に泣き叫ぶ弟をあやし終わり寝顔を見ていると、父の叫び声が上がった。
私は部屋の雰囲気がどす黒いことを感じて、弟をベビーベッドに寝かせ慌ててリビングに飛び出す。
そこで視たのは母に頭から喰らい付く、今までずっと視えていた化け物だった。