第3章 倦怠期に喧嘩した七海との話
『うわぁ、痛そう……』と、その痛みを想像しただけでしかめっ面になるのも仕方ない。だって、彼は最強様だもの。
「放っておいて下さい。通行の邪魔だったので」
「えー……、まぁいいや。という訳で、散れ」
男たちはまるで悪魔を見たような表情で、蜘蛛の子のように散り散りに逃げて行く。その姿は、とっても滑稽だった。
ゆっくり話をしよう、との事で繁華街から離れた公園のブランコに座った。
先輩はご機嫌に凡人にはできないレベルで、ブランコを楽しそうに漕いでいた。
「……で、先輩はどうしてここに?」
「七海から連絡が来たんだよ、『が居なくなった』ってさ」
自分から『距離を置きましょう 』って言ったくせに、随分な言い様ではないか。
確かにちゃんと私には建人さんが必要だとか、わがままを言えなかった私にも非はあるけれど。
「で、何があったの」
「まず、私の身の上の話をしなければなりません」
私は、重い口を開いた。