• テキストサイズ

【じゅじゅ】短編集

第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)




「……よかった」

「よかった、じゃないんだけど」

 先生が私の額にデコピンをする。

「……少なくとも、僕はよくなかった」

 先生が身を乗り出して、デコピンをした場所に口づけを落とす。

「……先生? どうしたの?」

 次に、まるで確かめるようにその大きく温かい手のひらが、私の輪郭を包み込む。

「本当に、生きてるんだよね? ドッキリとか言わないよね?」

「何、言ってるんですか。生きてますよ」

 先生の手の甲に触れると、少しだけ震えたのが分かる。

「私の温もり、伝わってます?」

「うん……」

 先生を不安にさせてしまったらしい。この慢性的に人員が不足している呪術界だ。それも仕方ない。

「あと、お見舞い来れなくてごめんね。準備に思いのほか、手間取っちゃって」

「準備、ですか?」

 先生は、私の頬を撫で、その目隠しを取る。

 綺麗な綺麗な空色の双眼が私を、愛おしそうに見つめていた。

 そして差し出されたのは、大きな真っ赤な薔薇の花束だった。

「これ108本あるんだよ。意味、分かるよね?」

 前、野薔薇と話したことがある。薔薇の本数で変わる、その意味の話を。

「……先生の馬鹿。色々飛ばしすぎだよ」

 涙が、止まらない。



/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp