第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
「私、まだ16歳の子供だよ?」
「子供じゃない。君は立派な呪術師だ」
「絶対、後悔するんだから」
「しないって。だって、最強の僕が選んだ子だよ?」
先生は、『泣き虫だなあ』と笑って涙を拭ってくれる。
「なかなか、本家の奴ら言いくるめられなくてさ。遅くなって、ごめん。色々飛ばしちゃったけどさ、僕ずっと君のこと好きだったんだよ? 柄にも無く、他の子よりスキンシップ多くしたりしてアピールして。それなのに君ってば、気づいてくれないんだもん」
ああ、今思えばスキンシップは他の人よりも多かった気がする。
「今回だって、君を失うかもって気が気じゃなかった。だからこそ、僕はこうして君に伝えてる」
好きで、好きで、仕方ない。
好きという気持ちが、愛に変わっていくのを感じる。
「僕と、結婚してください」
私は筋肉の落ちた身体を無理矢理に動かして、その愛おしい人に情けなく涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔で抱きついた。
「先生、好き」
「うん。僕の気持ちに応えてくれて、ありがとう」
「君を、心から愛してるよ。元気になったら、一緒に指輪見に行こう」
その一部始終を、硝子さんと一、二年の各々に見られていたらしく、しばらくネタにされていじられた。
恥ずかしかったけど、先生は『牽制できていいでしょ』と笑っていた。
それから三ヶ月後、私は地獄のようなリハビリとトレーニングのおかげで、前線復帰した。
もちろん、先生。いや、烏滸がましいけど旦那さんも共に。
お互いの左手の薬指には、シルバーリングが太陽の陽の光を浴びて輝いていた。
【完】