• テキストサイズ

【じゅじゅ】短編集

第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)




主人公視点



 目が覚めたとき、視界に入ったのは見慣れた場所だった。

「……あは、生きてる」

 思いのほか、掠れた声が出たから相当眠っていたらしい。

 あの呪霊は恐らく、私が高専の医務室に居るということは無事祓えたんだろう。

 身体のどこにもケロイド以外の欠損が無いのを見ると、硝子さんが反転術式で治してくれたらしい。

 でも、この一件はもちろん彼も知ってしまったのだろう。あの時、私は先生に助けを求めなかった。

 それはもちろん、先生はあの日呪術界の上の人たちに招集されていて、空気を読んだのもあるけど、こんな惨めな姿を見せたくなかったのと、一番の理由は、極限の下湧き上がる彼への想いに混乱していたから。

『好き』なんて、言葉にしてしまって、彼に断られでもしたらどうなるか分からなかった。それくらいなら、呪術師として勇敢に戦って、非術師を守って死に行きたかった。

 ただでさえ、ひと回り近い年齢差だ。彼は成人していて、私なんて今の今まで恋すら知らなかった、ただの未成年。

 そう思うと、悲しくなってきて泣けてきた。

「なーに、泣いてんの」

「……せんせい?」

 気がつくと、先生がベッドの脇に立っていて、私の涙をその指で拭っていた。

「まず、最初に僕からお説教。何で、僕のこと呼ばなかったの? 命が危なかったら逃げるか、僕を呼んでって言ったよね?」

 先生はお説教と言ったけど、その声色はどこか寂しげで、後悔も少し孕まれていた気がする。

「まあ、君は優しいからね。逃げなかったのは、君の同級生たちを守るためだとは思うけど。どうして、僕を呼ばなかったの? あの同級生たちが、補助監督に特級の様子を伝えなければ君、死んでたよ?」

 ああ、あのバカたちは無事なのか。

/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp