第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
それからのことは、実はあまり覚えていない。
高専に飛んだ僕は、すぐ硝子に彼女を託したところまでは覚えている。
「おい、聞いてるか」
処置が終わったのか、硝子が項垂れる僕に声をかけてきていた。
「結論から言うと、一命は取り留めたよ。見上げた生存本能だね、呪霊に吹き飛ばされた時、咄嗟に頚椎や脊椎を守るのに腕から壁に突っ込んだらしい」
「……その、腕は」
「誰に言ってんの。元通りにしたよ」
ああ、そうか。彼女は僕が思っていたより、呪術師として成長していたらしい。
「容態が安定してからじゃないと面会できないけど、会いにきてやってくれよ。ああ、あとその辛気臭い顔、直してからな」
硝子の言うことは最もだった。
「今回のことは、誰のせいでもないよ。これは、どう足掻いても避けようが無かった。それだけは履き違えるなよ」
それだけ言うと、硝子は医務室の奥へ消えていった。
僕を誰だと思ってるんだか。
「僕は、最強だっての」
彼女が起きた時が、勝負だ。彼女が起きた時、僕は彼女に告白をする。
「準備、しなきゃな」
目隠しの下の滲み出したそれを指先で拭い、僕は準備をしに歩き出した。