第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
たとえ、術師を続けられなくなっていてもいい。ただ、僕の隣で笑っていてくれたら、それだけでいい。ただ、彼女に生きていて欲しかった。ただ、それだけだった。
そんな想いを裏切るかのように、僕の視界に入ってきた現実は、そんな甘いものでは無かった。
亀裂が四方八方に走る壁を背に、凭れかかる彼女の身体はボロボロで、その閉じられた瞼からは血が頬を伝って流れ落ちていた。
何度も、何度も。何度も何度も何度も、名前を叫ぶ。
もう、失いたくなかった。その身体を抱き寄せて、何度も名前を叫ぶ。
こんな形で抱き寄せることになるなんて、数分前の僕だったら、思わなかっただろう。
「すぐ、助けてやるからな」
ようやく、口にできたのはそれだけだった。