第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
彼女の現場に文字通り飛んで、状況を確認すると、報告では居ないはずの非術師の存在があり、そいつ等からも確認するとどうやら彼女の同級生で、間一髪彼女が逃したらしい。
いじめを受けていたはずなのに、彼女は優しすぎる。
現場に飛んで一番最初に視界に入ったのは、見覚えのある制服に身を包み、腰が恐怖で砕けて涙と鼻水を垂れ流しながら、地面に蹲る男女数名だった。
十中八九、恐怖が極限に達して呪霊が見えるようになったんだろう。
それにたしかあの制服は、以前彼女が通っていた中学の制服の筈だ。
「お、お兄さん……」
そのうちの一人が、恐怖で震える声で僕に声をかけてきた。
「アイツ、助けてやってください! アイツをいじめてきた俺等が言えた義理じゃねえけど、アイツ恨み言も言わないで、俺等を逃してくれたんです!」
ああ、アイツらしいな。なんて、思った瞬間、帳の向こう側から轟音が聞こえてくる。
もちろん、彼女の怒号も。
僕は平常心の裏で、焦りを抱えながら帳の中に駆け込んだ。
視界いっぱいに広がるのは、粉塵と特級が祓われ消える瞬間だった。
彼女はどこだ。粉塵を吸い込まないように身体に無限を纏わせ名前を叫びながら、彼女を探す。