第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
それから僕は、彼女と一緒に居る時間を増やした。
お互いの休みが被ったら、外にご飯に誘ったし、極力任務も被るようにした。
彼女に少しでも、僕のことを意識して欲しくて連れ出していたんだけど、結局は美味しいものを食べている彼女の笑顔を見るのが楽しみになっていた。抱きしめて、早く自分のものにしたい。
彼女は、目の前の僕が。自分の学校の教師がそんなことを思っているなんて、知らないんだろう。
そんな時だった、彼女が初めての単独任務にあたることになったのは。
今でも、後悔している。上の言うことを聞かずに、あの時任務に同行していれば、と。
上の連中のお小言を聞き流し、適当に返す。
『あー、早くあの子の任務終わらないかな』
『早く撫で回したいな』
三級呪霊相手だから、二級術師の彼女なら恐らく大丈夫だろうと思っていたら、不意に携帯電話が鳴った。
ディスプレイを見ると、相手は今日彼女の任務に同行している補助監督からだった。嫌な予感に、背中を悪寒が駆け上がる。
「何ー? 今、僕忙しいんだけど?」
その口から発せられた言葉に、僕の頭の回路が切れそうになる 。
『任務現場に、一級呪霊か特級呪霊が出現した可能性があります』
心臓が嫌な音を立てて脈打つ。彼女は二級術師だ。一級ならまだ一ヶ月程度の怪我で済むだろうけど、特級だとどうなるかすら予想に難くない。
また、僕は失うのか?
傑のように、また取り零すのか?
それだけは、死んでも御免だ。
「すぐ行く」
それだけを伝え、終話ボタンをタップする。
上のクソジジイたちが何か喚いていたけど、今の僕にはどうでも良かった。
「今、僕の大切な子の身が危険なんだけど、止めてくれるなよ?」