第2章 瀕死になった主人公と五条(ネームレス)
「だって君の身長、頭撫でるのに丁度良いんだもん」
これは、本当。手のひらに収まる感じがたまらない。
「もしかしなくて私、小動物的な扱いされてません?」
『小動物』と言う名前を聞いて、思い浮かんだのがハムスターだった。この子が、ハムスター?
頭の中に浮かんだのは、ご飯を頬いっぱいに詰め込んだ彼女の姿だった。
あまりの可愛さとおかしさに、噴き出して笑った。どうやらそれは、野薔薇も同じだったようだ。
「先生はともかく野薔薇まで笑うなんて、酷いよ!」
「ごめん、ごめん。だって、アンタが可愛いからさ」
可愛いものを見れて、僕としては嬉しいんだけど。
「ねえ、僕がともかくってどう言う意味?」
「野薔薇だって可愛いよ?」
「ねえ、無視しないで?」
それからと言うものの、何を言っても無視され続けて少しだけ心が折れた。
彼女を寮の部屋まで送り届けた時、野薔薇が口を開く。
「あの子、恋したことないみたいよ。それに恋心さえ自覚してない」
と、確かに言った。
「本気なら、あんな回りくどいことしてないで、直球でいきなさいよ」
そう言って、背を向けて自室に向かって歩みを進めた。
「……何で、バレてんの?」
本当、女って怖い。そう思った瞬間だった。