第2章 君たちが笑えば、私は幸せだと。そう思っていた。
銃兎視点
俺はすぐさま、左馬刻に電話をかけていた。
「おい、左馬刻」
『何だ』
「めんどくせぇから、単刀直入に聞く。……テメェ、妹さん以外に家族居ねぇのか」
『………。何だよ、急に。合歓しか居ねぇよ』
何なんだよ、今の間は。肯定してるようなもんじゃねぇか。
「テメェの妹さんのツラによく似た女が居たから、職質かけてみたんだよ。十中八九、苗字は実名じゃねえだろうな」
『……なんでその話を俺様にしに来やがった』
「……その人、今にも死にそうな。全部諦めた目をしてたんだよ」
『……は?』
「ただ、俺らのラップバトルの宣伝のポスターを見た時、その時だけは本当に幸せそうな顔をしたんだよ」
左馬刻が息を飲むのが分かる。そして、激しく動揺するのも。
「何があったかは聞かねえよ。……ただ、これは助言だ。……まだ【テメェは】間に合うんだろうが。失う前に、取り戻せ。それだけだ」
言いたいことは言った。あとは、あのボンクラが腹を括るだけだ。
俺は左馬刻の返答も聞かず、終話ボタンをタップした。