第2章 君たちが笑えば、私は幸せだと。そう思っていた。
「……なぁ、姉貴」
「ん、どうしたの?」
「……やり直せねえか?」
今、左馬刻はなんと言った?? やり直せないか、と言った?
「一から。家族として、やり直してぇんだ。やりてえことが、あんたにしてやりてえことが。……沢山あんだよ」
左馬刻を振り返ると、後悔の色に染まった表情で私を見つめていた。
「私もね、お姉ちゃんにしてあげたいこと、沢山あるんだ……。沢山聞いて欲しいこともあるし、お姉ちゃんに聞きたいことも沢山ある……」
合歓が私の手をその華奢な手で包み込みながら、そう話す。
「母さんもお前のこと待ってっから、俺らんとこに帰って来い」
その言葉に、涙腺がまた緩む。
「……っ、いいの?」
「当たり前だろうが、ダボ」
左馬刻は少し照れくさそうに、確かにそう口にした。
「俺らの姉貴は、こんなにも弱虫だったんだな……。気づけなくて、本当に悪かった」
私はまた謝りだした二人に笑みがこぼれる。
「言ったでしょう?私は二人が幸せなら、それでいいって」
でもね、それだけじゃダメだって。今の大きくなった、大人になった二人の温もりに触れて気づけた。
「今度は、三人で幸せになれるかな?」
この弟妹たちの幸せが私の幸せであるように、私の幸せがこの二人の幸せだって気づけたから。
「当たり前だ」
「当たり前だよ、お姉ちゃん!」
あぁ、私は。
私は、こんな家族を。こんな弟妹を持てて幸せだ。
「……おかえり」
「おかえり、お姉ちゃん!」
あぁ、何年ぶりの言葉だろう。
何年も何年も、求めたくても求められなかった言葉。
私は溢れ出した涙を手で拭い、笑顔でこう言った。
「……ただいま!」
【完】