第2章 君たちが笑えば、私は幸せだと。そう思っていた。
「……すまねぇ」
私の頬を滝のように伝う涙を、左馬刻はバツが悪そうな表情で拭う。
「……お姉ちゃん、ごめんなさい……っ」
なんで、この子たちが謝るの?
謝るのは、こっちなのに。
「……本当は分かってたんだ。
あんたにも、あのクソ親父の矛先が向く可能性があるって。
あん時の俺は、合歓と自分を守ることしか考えてなかった。だから……」
「でも、それが普通なんだよ?私がおかしくなってるだけ」
「でもなぁ……!」
左馬刻は、叫ぶ。
「だからって、テメェの姉貴のことを蔑ろにしていい理由にはならねえだろうが……っ!」
左馬刻の瞳には、少しだけだが涙が浮かんでいた。
「っ、なんでっ、来たのよ……!せっかく、一人で生きていけるって思ってたのに……!」
知られてしまえば、彼らが私を想って泣いてくれること。
そして、どんなことをしてでも探そうとするのは分かっていた。……分かっていたのに。
じゃあ、どうして私は自分の部屋にジュラルミンケースを置いてきた?
少なくとも、少ない希望を持って置いてきた筈だ。
少ない希望って……?
「……っ、ごめんねぇ……っ。お姉ちゃん……!
お姉ちゃんのこと……何も知ろうとしなくて……っ!
気づいてあげられなくて、ごめんね……。私たちを守ってくれて、ありがとうって…」
合歓が、私の背中に力強くしがみつくように抱きついてくる。背中がしっとりと、濡れていた。謝らないでよ……。
そんなことされたら、私……。