第2章 君たちが笑えば、私は幸せだと。そう思っていた。
「……」
「今から、あなたに一番酷なことをお伝えしなければなりません」
「……子供、産めないんですよね?」
馬鹿な私でも、わかっていた。
「ええ」
先生は、申し訳なさそうにそう言う。
「いいんです」
「え?」
先生は驚いたように、視線を私に向ける。
「今まで、大切な人たちへ伝えてこなかったバチが当たったんです。それに、私にとっては大切な人たちを守れた勲章みたいなものですから」
本当は左馬刻に、お母さんに助けを求めたかったけど、私はお姉ちゃんだから。
だって、お姉ちゃんは弟妹を、家族を守らなきゃいけないでしょう?
そう言うと先生は悲しそうに目を伏せて、ぽつりと話し始めた。
どうやら子宮だけでなく卵巣までもが壊れているらしく両方とも壊れてしまっているため妊娠については絶望的だとも話された。
私が淡々と話を聞いていたからか、精神科を受診することを勧められたけど、私はそれを断った。
だって、こんなになってまで家族を守れた。 それが私の全てで、誇りだったから。と、言ってもそれはあくまで建前。
悲しくないと言ったら嘘にはなる。
ああやって、手を繋いで帰りたかった。
.この腕に、我が子を抱きとめたかった。
私の人生は、唯一の家族を遠くから見届けることが全ての筈だ。
あの二人のために、人生を捧げた。泣きたくなるのは、歳のせいだ。
あの二人にまた会って、抱き合いたい。
また。
また、三人で……。