第6章 彼女
唯吹さんが居る場所につくと
マネージャーに担がれている彼女の姿が見えた。
こちらに気付いたのかマネージャーは俺の名前を呼びながら手を振っている。
マネ「快斗くん助かったよ!
唯吹、迷惑かけないようにね」
それだけ言うと唯吹さんを肩から下ろし手を挙げ帰って行った。帰っていくマネージャーの後ろ姿を見送ると隣から視線を感じ、目を向けると彼女は俺の顔をガン見していた
一ノ瀬「本物の黒羽快斗くん?」
俺の顔をベタベタと触ってくる
その手を両手で包み込む
『俺は本物ですよ』
一ノ瀬「そっか!本物の快斗くんかぁ!!」
勢い良く俺に抱きついてきた。
『ちょっ!』
一ノ瀬「声聞ければ満足だったんだけど、聞いたら会いたくなっちゃって。会いたかった快斗くん」
無邪気な顔でこんな事を言ってくる、この人は何なのだろうか。
俺を殺す気なのか?
あー…俺、今顔あけぇわ…
数分経つが離してくれる気はまだないようだ。
通り過ぎる奴らは俺達の事をジロジロと見てくる。
『あの〜、唯吹さん?そろそろ離してくれねーと恥ずかしいんだけど?』
一ノ瀬「ん〜、わかった」
体を話だと思いきや、次に腕を絡めてくる
『たっく…次は腕ですか?』
一ノ瀬「離れたくないんだもん。それじゃ家にレッツラゴー!」
『はいはい』
おぼつかない足で彼女は歩き出す。
腕を絡めて歩いているせいでいつもより顔が近い。彼女の身長が高いのとそれに加えてヒールも履いているからだろう。
近いせいで緊張すんな…
この前唯吹さんに言われた事を忘れずに
今日はポーカーフェイスを貫くつもりだけど近すぎて無理だろ。
酔ってるせいで無邪気な顔で俺を殺すような台詞も言ってくるしよ…
一ノ瀬「今日の快斗くんはポーカーフェイスがお上手で」
『この前唯吹さんに言われたからなぁ。頑張ってんだよ!』
一ノ瀬「マジックもしてないんだからポーカーフェイスしてなくてもいいのに?顔を赤くしてたり意地悪な顔が私は好きだよ、」
頑張って貫いたポーカーフェイスが一瞬で崩れる。
『せっかく頑張ってしてたのによぉ。そんなこと言われたら頑張り損じゃねーか』